あ、オオムラサキだ

それが初めてその器を見たときの印象でした。
オオムラサキとはその名の通り、美しい紫の下地に白い斑点を持つ、日本の国蝶と呼ばれるにふさわしい堂々とした美しさを誇る蝶です。
その小さな器の内側は、まるでオオムラサキが羽を広げて、最も美しい姿を見せたときのような深い紫と、白い斑点を持ち合わせていました。
さらに驚いたのは、器に白湯を入れて太陽の光の下にさらしたとき、まるで生きているかのように変化しはじめたことです。
内側の白い斑点は星々の輝きを映し出し、下地の紫は深い藍色と群青色が混ざり合った闇色と変わり、器が小さいことなどすっかり忘れて、さながら宇宙を思わせるような壮大な美しさを見せてくれたのです。
この器の名は「耀変天目茶碗」 世界にたった3点しか現存しない国宝です。
「耀(曜)」とは「星の瞬き」「輝き」を意味し、光の角度によってこのような紋様が現れることから名付けられました。
数ある天目茶碗の中でも「耀変」と銘を打たれ国宝となるには必須条件があります。
ひとつは建盞の見込み、すなわち内側の黒い釉薬の上に大小の星と呼ばれる斑点(結晶体)が群れをなして浮かんでいること、またその周囲には暈天のように、瑠璃色あるいは虹色の光彩が取り巻いていること。
最後に、器の内側に光を当てると、その角度によって変幻自在、七色の虹の輝きとなって跳ね返ってこなければなりません。
この奇跡のような条件をすべて満たしている茶碗のみが「耀変天目茶碗」と呼ばれ、室町時代から天目茶碗の最高峰として位置づけられてきたのです。
なぜこのような美しい紋様が現れるのか、また紋様は意図的に造り出されたものなのか、それとも偶然によるものかは未だに解明されていません。
いずれも焼成前に決定されているはずの素地土は、当時では最上のものが用いられ、高台の削り出しも精緻を極めていることから、3点の耀変天目茶碗は焼成中の偶然の所産であり、また陶工が試行錯誤の果てに、わずかに完成をみた可能性もあると言われています。
現在でも同じものを造ろうと、陶工が技術の粋をつくして、年間2~3万個を焼き続けているそうですが、苦心惨澹の末に独特の斑紋が出るのは数個であり、状態の良いものは更に少なく、いまだに一つとして「耀変」の域に達したものはできないそうです。
「習作」という言葉が絵画の中にあります。1枚の完成品を描くために、何度も何度も、絵師が納得いくまで同じものを描き続けていく手法です。現状に満足せず、より高みを目指し、必ずできると信じて、次こそは、次こそはと、自分の技術不足だけではなく、心の弱さと戦いながら仕上げていく厳しい画法です。
耀変のみならず、歴史に残る逸品は、このような人々の「あきらめず、自分を信じる」という強い思いが込められているからこそ「名器」「名作」「名画」と呼ばれて、時代を超えてわたしたちの心を打ち、魅了する力があるのかもしれません。
耀変天目茶碗は、「あきらめなければ、必ずできる」という人間の大きな可能性を、その壮大な美しさと輝きをもって、時代を超えて今もなお、わたしたちに伝えてくれているのかもしれません。
本社 自称 トレジャー・ハンター MN
-ブログ管理者より-
なんと、この絵はトレジャーハンターさんが、自ら絵筆で描かれました!
すばらしいですね。写真より伝わるように感じます。
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